緋色流 レビュー&考察

鑑賞したアニメや洋画のレビュー、考察などをするブログです。

Key作品考察 AIR Angel Beats! Charlotte 生まれ変わり三部作という捉え方

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 ⚠︎この記事では、AIR、Angel Beats!、Charlotteのネタバレを含んでいます。

 
ABとCharlotteを一括りにする人は少なくない。制作会社がP.A.WORKSで、どちらもオリジナルアニメ。
しかしその一方で、CharlotteとABのストーリーが似ているかと言われれば違う。時々、"CharlotteはABのキャラクターが生まれ変わった話"と言う人もいるが・・・
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それはさておき、以前フォロワーさんから「CharlotteAIRのリブート作品(ソースは不明)」という話を聞いた。どこ情報か不明なため根拠はないが、非常に興味深いことだと思う。
実は管理人も、CharlotteAIRと同じ話だと思っているからだ。
"CharlotteAIRのリブート"っていうのは設定面的に無理のある話だが、そういう考えがあるのは面白い。
 
ということは、生まれ変わりを描いているAIRAngel Beats!Charlotte は"輪廻転生三部作"ということになるじゃないか。
 
「三作品に共通する人によって受け取り方の違う"結末"」
 
例えばAIR。原作をプレイした京アニ製作陣は、AIRを"ハッピーエンド"だと捉えている。それに対し東映版の製作陣は"悲劇の物語"だと捉えたそうだ。明らかに最後の受け取り方が違っている。「せっかく親子関係になれたのに、観鈴が死んでしまうなんて悲しい」と思ったのかもしれない。

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ABもそうだ。最終回、音無以外のメンバーは"消えた"のに、主人公だけが取り残されてしまった。その後、EDの演出では音無は消えているしCパートでは生まれ変わった音無らしき人物が描かれている。にも関わらず、それも人によって"受け取り方の変わる結末"で、音無があの世界に留まっているという考えも少なくない。もっとも、公式曰く音無は消えたと明言しているが、ANOTHER EPILOGUEのせいで"音無は消えてないんじゃないか"と考えるのも無理はない。

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AIRやABはともかく、どう考えてもCharlotteはハッピーエンドでしょ」と思っている人は多いかもしれないが、果たして本当にそうだろうか。
一見するとCharlotteのラストは希望的だが、それはあの一瞬だけで、乙坂と友利のその後の人生は苦痛ばかりで、Charlotte本編以上の試練が待ち構えているかもしれない。冷静に考えれば分かることで、乙坂は世界中の(元)能力者を敵に回して賞金首になっているのだ。恨みを買いまくっているんだから、いつ狙われても不思議じゃない。
確かにCharlotteの最終回自体はハッピーエンドかもしれないが、その後については最終回の受け取り方次第で、意見が割れてくるだろう。
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もっとも、これは生まれ変わりの物語だからこそ、言えることでもある。なぜなら最終的に生まれ変わりに必要なのは"消失"だからだ。何かが消えて新しい物語がスタートする。"消失"は、"観鈴の死"、"戦線メンバーの卒業"、"カンニング魔だった時の乙坂の人格の死"のことである。AIRAngel Beats!Charlotteに限った話じゃないが、"Key作品はループ"と言う人がいる。それは、輪廻転生を描いていたり、最終的に物語がリスタートする部分が、"Key作品ってループだけどループじゃない"と言われる理由なのかもしれない。
 
「三作品は限りなく違う"生まれ変わり"の物語」
とはいえ、いくら三作品が生まれ変わりを描いているとまとめても違いがあるので、適当に分析してみよう。

まずはAIRから。AIRでは長く続いてきた"呪いの元凶(SUMMER編)"をきちんと描いている。補完的な話かもしれないが、ABやCharlotteにはこうした"元凶"のお話は本編に必要ないため描かれていない。しかしAIRの場合、"何度も繰り返してきた"ということを頭にインプットするため、SUMMER編は極めて大事な役割を持っていただろう。"生と死"を繰り返し、最終的に観鈴は解放され、再び生きる。設定は複雑かもしれないが、これが一番シンプルな輪廻転生ストーリーだ。
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次にAB。ABは輪廻転生における"中間"を描いている。彼らの存在している世界は、"前世"でもなければ"来世"でもない。その中間にあたる"死んだ世界"なのだ。
死んだ世界にいる戦線メンバーは、ゆりっぺに影響され"神への復讐"に囚われていた。"神"は"生"のメタファーでもあり、神に抗うという行為自体が、生きることへの拒否である。
AIRのように、呪いのせいで強制的に輪廻転生を繰り返す現象はなく、受け入れた者から速やかにあの世界から退場し、生まれ変わることが出来る。実際は、長居し過ぎたせいで、高松がNPC化するというプチ悲劇が起きた。
輪廻転生の"過程"とも言える部分、"再生"をフューチャーした物語がABだろう。
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最後にCharlotteCharlotteで生まれ変わるのは主人公の乙坂だ。しかし彼の場合、観鈴のように物理的に死ぬわけではない。能力者回収の役目を終えた乙坂は記憶を失い、かつての人格は消え失せていた。カンニング魔だった彼は死んだのだ。つまり、能力の代償に記憶を払った結果、人格が生まれ変わった。乙坂が能力者回収の旅から解放されるのと、観鈴が夢の呪いから解放されるのはよく似ていると考えている。例えば旅の途中、乙坂の記憶が錯乱し友利との約束を忘れかけるが、同じように観鈴が晴子が誰なのか分からなくなったりする。指摘こそされないが、厳しい試練によって頭が混乱するのは二人の共通点だ。乙坂の"約束"も、観鈴の"ゴール"と似たようなものだろう。個人的にこういうところがCharlotteAIRのリブートと言われる由来だと思っている。
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つまり、AIRは物理的に生まれ変わる話で、ABは生まれ変わりの途中経過、Charlotteは人格的に生まれ変わる話なのだ。
麻枝准のテーマ「どんな困難なことがあっても諦めず一生懸命生きよう」にハマる形で出来たのが、再び"生"に立ち向かう"生まれ変わり三部作"だったのかもしれない。
 
AIRより前に、MOON.、ONE〜輝く季節へ〜Kanonがあるし、だーまえが影響を受けた作品はきっとたくさんあるだろう。それでも、AIRはABとCharlotteの原点的作品なんだなと思う今日この頃。
それを踏まえた上でこの二つの記事を読んでもらえると幸いです。