緋色流 レビュー&考察

鑑賞したアニメや洋画のレビュー、考察などをするブログです。

Key作品Angel Beats!考察 ゆりっぺにある沙耶と恭介の面影

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Angel Beats!の記事は色々まとめてきたが、"キャラクター考察"はやってなかったんで今回は仲村ゆりについて考察していこう。

 
仲村ゆりとは、ポンコツばかりの戦線メンバーをまとめたリーダーである。
 
そもそもABの物語が成り立ったのは、ゆりっぺが神に抗い始めたからだ。
「神への復讐。その最前線」。
これがABのキャッチコピーだが、"神は生のメタファー"でもあり、理不尽な人生を歩んできたゆりっぺは、神を拒む。それは再び生きることを拒否しているのと同じだ。神は拗らせた青春時代を送ってきた人間を"死んだ世界"に招いていた。神は救済させようとしているのだが、ゆりっぺに従う戦線メンバーは同じくそれを拒む。良くも悪くも彼女の考えに影響されたせいだろう。

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他のキャラクターの考えは分からないが、ゆりっぺは一貫して"理不尽だった人生"を受け入れようとしない。思えば天使こと立華かなでの方が"死んだ世界"がどういう場所なのかきちんと理解していた気がする。"激しい怒り"を持って神に対抗する世界ではなく、神自身が報われない人生を送ってきた彼らに同情し、青春を取り戻すチャンスを与えているのだ。かなではそれを理解し、生前送れなかった"まともな学生生活"をあの世界で味わっていた。
 
それに対しゆりっぺは、かなでを神の使いだと思い込み、"立華かなで=天使"と戦線メンバーに教えている。その結果、"死んだ世界"の役割である"救済"が活きなくなったのである。
天使に消されまいと行動していたため、何をするのにも大掛かりになってしまった。これが後の"オペレーション"。

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しかし、その割にはゆりっぺの提案する"オペレーション"には無駄な労力が必要で効率も悪い。
例えばオペレーショントルネードだ。「いや、お前ら既に死んでるんだから食券くらいであんなに労力使わなくてよくね?!」と突っ込んでいる人がたまにいる。ぐうの音も出ない、全くもってその通りである。オペレーショントルネードに限った話じゃないが、ゆりっぺの提案する作戦は何かと大変な目に合うことが多い(死なないとはいえ)。
 
言ってしまえば、ゆりっぺは全能ではなく、むしろポンコツ部分が多いということだ。これは朱鷺戸沙耶からゆりっぺに受け継がれた"遺伝子"だろう。

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朱鷺戸沙耶リトルバスターズ!エクスタシーに登場するヒロイン、声優は櫻井h...おっと失礼、風音さんでした(アニメ版の声優は櫻井浩美さん)。
因みにゆりっぺのキャスティングはオファーではなくオーディションで、櫻井さんが実力で勝ち取ったものだとだーまえが公言している。
とはいえ地下(ギルド)に行く流れや、ツンデレ的な発言、何回も死んだり(死にかける)など似たような部分も多い。
 
そもそもエクスタシーとABの製作時期は被っていたのではないかと指摘されることがある。エクスタシーの初回販売日は2008年だが、ABも企画自体は放送開始(2010年)の数年前からあった。
沙耶が登場するのはエクスタシーのみだが、非常に人気があることで有名で以前公式が行なったKeyキャラクターランキングでは3位に君臨していた。更に、だーまえリトバスのキャラクターの中で沙耶が一番のお気に入りらしい。そう、"作り手とファンの利害が一致している"キャラクターなのだ。ファンの間でも人気があった沙耶の"遺伝子"をゆりっぺに取り入れたのだろう。

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ベース部分の多くは沙耶から来ているのかもしれないが、ゆりっぺの"葛藤"は違う。これは棗恭介から来ているものだろう。正確には違う、恭介で描けなかった"葛藤"をゆりっぺに出そうとしたのだ。

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直枝理樹と棗鈴の目線で進むリトバスは、恭介の抱えていた"葛藤や苦悩"の全貌が分かるわけではない。むしろその逆で、なんでもスマートにこなす"みんなのリーダー"として描かれている。実際はただの高校生、スマートに見えて苦労や失敗も多かっただろう。前述した通り、理樹の目線だとそれらは恭介が隠しているため、分かりづらい。
それに対しゆりっぺは、リーダーであることに責任を感じつつ、生前の自分はいかに無力だったかなどを描いている。決して全能ではなく、ミスも多い。恭介との違いは、恭介のように理樹の目を通してキャラクター像が分かるのではなく、ゆりっぺ目線(主人公)で物語が進むということや、具体的な葛藤が描かれていることだろう。
特に12話では、彼女の抱えていた葛藤が分かりやすく描かれている。"姉としてのゆりっぺ"、"リーダーとしてのゆりっぺ"、"一人の少女(学生)としてのゆりっぺ"など、沙耶や恭介以上に様々な面を見せてくれる。
戦線メンバー全員に共通することだが、"理不尽な人生"が、自分の人生なんだと受け入れなくてはならない。これを受け入れられず一番葛藤していたのがゆりっぺだろう。最終的に彼女の抱えていた葛藤を含めた問題は解決する。
最終回、音無から「リーダーっぽくなくなったな!」と言われるが、その表情は、自分の役目を果たした後の恭介によく似ているんじゃないだろうか。

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仲村ゆりは、朱鷺戸沙耶と棗恭介を"遺伝子"を掛け合わせ、改良して誕生したのかもしれない。
 
ここまで考察してきて言うのもあれだが、ゆりっぺのモデルになったキャラクターは沙耶や恭介ではなくペルソナ4に登場する天城雪子である。管理人はペルソナをプレイしたことないので天城雪子さんについてはよく分からないが、おそらくゆりっぺのデザイン面のモデルではないかと思われる。

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因みにABの元ネタ作品である「灰羽連盟」にゆりっぺみたいなキャラクターはいないので、キャラクター像は別で、影響を受けたのは設定面だけだろう。

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