緋色流 レビュー&考察

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Key作品Angel Beats!考察 "人間らしさ"を取り戻した音無の最後

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Angel Beats!キャラクター考察第二弾。今回は主人公の音無君について考察していきますよ。


音無と言えばAB最終回での行動が印象的なキャラクターだった。そう、よりにもよってあのタイミングでヒロインのかなでに告白したのだ。結果、あの行動は賛否両論を巻き起こし、「最終回までは良かったけど、音無だけ取り残される結末はどうなのよ」みたいな声も少なくない。実際、あの時の音無の行動は批判対象の一つで、放送終了後も2chではボロクソに叩かれていた。

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"なぜ、音無は最後に告白したのか?"、"なぜ音無の行動を叩く人が出たのか?"、彼の人格や生前に触れつつ考察していこうじゃないか。


そもそもABの悪いところに、"人物描写が浅い"っていうのがある。あれだけ大勢のキャラクターがいるわりには、きちんとその人物を描けてないのである。この悪かった点は後のCharlotteで改善されているだろう。

キャラクターに対して批判が注ぐのは、"視聴者がそのキャラクターについて理解出来ていない"ということで、それはキャラクターがきちんと描かれていないということになる。もっとも、キャラクターがきちんと描かれていても、そのキャラクターに感情移入出来るかどうかは別だが。

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つまり、音無の"人格"も理解出来ていないのだろう。


①「音無結弦は"ダメな奴"という見方」


まず、多くの人がこう認識しているかどうか非常に気になる。管理人からすれば、基本的に音無結弦は"ダメな奴"という認識だ。

生前の音無は、入院中の妹(初音)の様子を見に病院に通っていた。

初音は入院しているため、学校には通えない。そんな中、初音は音無に対して"学校は楽しいか"と聞くが、音無は"楽しくない"と言う。学校に憧れを持つ妹に、なんて回答をするんだろう。音無に悪気があったわけではないし、"妹が期待して後でがっかりする"という流れを避けたかったのかもしれない。

「学校ってすごく楽しい場所だからさ、お前も早く治して通えるようになれよ」と答えるのが正しいかどうかはわからない。だからと言って、"憧れをぶち壊すような回答をするか"という話である。

何にせよ学校に対して憧れを抱く病弱な妹に、「学校なんか楽しくねえよ」と答えるのが音無結弦なのだ。

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もう一つ、最終回での音無の行動について。

「ゆりやひなたのように報われない人生を送ってきた奴らがまたこの世界に住み着いて"生"に抗い続けるだろ」

「でも俺とかなでが残っていれば、そいつらに生きる良さを教えてやってこの世界から卒業出来るかもしれない」

「だからさ、一緒に残ろうぜ!」

卒業式後、音無がかなでに誘った言葉を要約するとこんな感じである。

さらにその後かなでに告白するわけだが、知っての通りかなでの返事は"ありがとう"で、音無の申し出を半ば拒否した形でもあった。

百歩譲って、初音との絡みは"ただの鈍感男"でいいかもしれないが、最後の音無の行動はダメダメだろう。理由はどうであれ最終的に音無の行動は"生きることを拒んでいる"のだ。彼自身にそういうつもりはないのかもしれない。"かなでのことが好きだから一緒に残る"、"あの世界に住み着く人がもう二度と現れなくするためにかなでと一緒に残る"。

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そこにどんな理由があろうがABは"再生"をテーマにした作品、最後の最後になって主人公が「ここに残らないか?」と言うのは「生きるのから逃げないか?」と同じ意味を含んでいる。前述した通り音無自身にはそういうつもりはなかったのかもしれないが、他のメンバーを再び人生に立ち向かわせておいて本人はあの世界に残りたいと言うのだ。それに、新しくあの世界に来た連中を卒業させたいと言いつつも、自分は愛するかなでと残り続けるって幾ら何でも都合の良い考えだろう。


これこそが"音無はダメな奴"なんだなと思った大きな理由だ。

まあでも、それだけだと音無が可哀想なのでもう一つ"ダメな奴"以外の見方をまとめてみよう。


②「音無は"徐々に人間らしくなっている"という見方」

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以前どこかの記事で音無は自己中心主義だったのではないかという指摘されていた。そういう見方もいいだろう。ただ"自己中心主義"と言っても、常に絶対そうであったとは言えない。例えば最終回での行動、自己中心的な部分が最後の最後になって出てきてしまったのではないだろうか。

"自己中心的な部分が出てきた"だと聞こえが悪いから、"人間らしい部分が出てきた"に変えるべきかもしれない。元々AB序盤の音無は、周りに合わせて行動してるだけだった。記憶が戻ったのもあるが、徐々に自分の考えを出せるようになっていた。

話数を重ねていくうちに人間らしさが増し、最後の最後になって"あの世界に留まりたい"という一番人間らしい"欲"みたいなものが現れたのかもしれない。「ここに残らないか?」=「生きるのから逃げないか?」と前述したが、これは"かなでと一緒にいたい"という"欲"である。また、"新しい生"を拒んだように見える音無の発言は、単純に彼の弱い部分(人間らしさ)が出てきたのかもしれない。

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まとめたのは2つだけだが、音無は人間らしいキャラクターじゃないかと思う。特に話が進めば進むほど、その人間らしい部分が出てきてるのが特徴じゃないだろうか。そもそも"人間らしさ"のないキャラクターだったらあんな最後にはならなかっただろう。

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